AIコーディング 2026.05.10

Claude×GitHub Actionsでマルチエージェントシステムを構築する方法|実装手順と事例

タグ:Claude / GitHub Actions / AI自動化 / マルチエージェント / ワークフロー

これでできること:複数AIエージェントの協力作業を自動化する

生成AIを1つの単体として使うのではなく、複数のAIエージェント(専門性を持つAI)が協力して目標に向かって動くシステムが注目されています。Claudeと呼ばれるAIと、GitHub Actionsという自動化ツールを組み合わせると、こうした「自律型マルチエージェントシステム」を比較的すぐに構築できます。

実際の活用例としては以下のようなものが報告されています:

SEO記事の自動作成・最適化:複数のエージェントが記事案の検索キーワード調査、本文作成、検索順位の改善といった異なる役割を分担し、全工程を自動で進めることができます。これまで人間が1週間かかっていた記事作成作業が数時間で完了する可能性があります。

ソフトウェア開発の並列実験:16個のClaudeエージェントが同時に異なるアルゴリズムを試し、成功した方法をまとめるといった運用も実現しています。これにより、開発期間の大幅な短縮が期待できます。

交渉・意思決定の自動化:複数のエージェントが異なる立場から協議し、合意に達するプロセスまで自動化する事例もあります。このとき、エージェント同士が互いの視点を知らないままで協議する仕組みにすることで、より客観的な結果が得られると指摘されています。

これらはすべて、従来の単一AIツール(ChatGPTやBardなど)では実現できない働き方です。複数の視点を組み合わせることで、人間では思いつかないアイデアや解法が生まれる確率が高まります。

準備するもの

このシステムを構築するために必要な準備は、意外とシンプルです。

1. Claudeの利用契約:Anthropicという企業が提供するClaudeというAIを使います。API(外部ツールと自動で連携するための接続口)を利用する形で、従量制(使った分だけ支払う)の料金体系です。個人の実験であれば月数百円から数千円の範囲で始められます。

2. GitHubのアカウント:コード(プログラムの命令文)を管理し、自動実行するためのプラットフォームです。無料アカウントで十分です。

3. 基本的なプログラミング知識:Pythonという初心者向けのプログラミング言語が使われることが多いです。ただし、既存のテンプレートやサンプルコードをコピー&ペーストして少し手直しする程度の知識があれば、本格的なシステムが構築できます。

4. テキストエディタ:コードを書き込むためのシンプルなソフトウェアです。Windows付属の「メモ帳」でも最初は問題ありませんが、プログラミング専用のエディタ(Visual Studio Codeなど、多くは無料)を使うと便利です。

実際のマルチエージェントシステムの構築では、複数のエージェントがそれぞれの役割を明確に持つ設計が重要になります。たとえば、SEOシステムであれば「キーワード調査エージェント」「記事執筆エージェント」「品質チェックエージェント」というように、各エージェントの得意分野を決めておくことで、チーム全体の効率が大きく上がります。

実装の手順(5つのステップ)

ステップ1:GitHub Actionsの基本をセットアップする(目安:20分)

GitHub Actionsとは、GitHubのサーバー上で自動的にプログラムを実行してくれるサービスです。たとえば「毎日午前8時に記事作成を開始する」「ボタンをクリックしたら自動で検査を走らせる」といった指示をあらかじめ書き込んでおくと、その通りに動きます。

まずGitHubのリポジトリ(プロジェクトのフォルダのようなもの)を作成し、.github/workflowsというフォルダを用意します。ここにYAML形式(設定ファイルの標準形式)のテキストファイルを置くことで、実行ルールを定義します。

公開されているサンプルプロジェクトでは、Pythonスクリプトを毎日決まった時間に実行する設定が示されています。これは「スケジューラー」と呼ばれ、Linuxの標準機能を借りて実装されます。

ステップ2:Claudeエージェントの役割分担を設計する(目安:30分)

複数のエージェントが効率よく協力するためには、事前に「誰が何をするか」を明確にしておく必要があります。

たとえばSEO記事作成システムであれば以下のような分担が考えられます:

  • エージェントA(調査係):Google検索など外部データを参照し、キーワード候補とユーザーのニーズをまとめる
  • エージェントB(執筆係):エージェントAの調査結果をふまえて本文を作成する
  • エージェントC(チェック係):完成した記事を読み、SEO最適化や誤字脱字がないか確認する

各エージェントは専門的な「指示」(プロンプト)を受け取ります。この指示は、人間が部下に仕事の詳細を伝えるのと同じように、「あなたの役割は何か」「どんな成果を期待するのか」「どのルールに従うべきか」を明記します。

ステップ3:エージェント間の通信方法を決める(目安:40分)

複数のエージェントが協力するには、エージェント同士が「今、ここまで進んだよ」と知らせ合う必要があります。この仕組みを「通信」と呼びます。

一般的には以下の3つの方法が使われます:

直列実行(順番に実行):エージェントAが終わったら、その結果をエージェントBに渡す。エージェントBが終わったらエージェントCに渡す。この方法は最もシンプルで、時間がかかります。

並列実行(同時に実行):複数のエージェントが同時に動きます。Anthropic(Claudeを開発した企業)の報告では、16個のエージェントを同時に動かしてソフトウェアの最適化を試みたといいます。この方法は時間は短いですが、結果をまとめるのに工夫が必要です。

段階実行(グループごとに実行):エージェントを3~5個のグループに分け、各グループが終わったら次のグループに進むというやり方です。バランスが良く、実務的に採用されることが多いと思われます。

実装では、JSON形式(コンピュータが読みやすいデータの記述方式)やテキストファイルを介して、エージェント間でデータをやり取りします。

ステップ4:実装コードを書き込む(目安:60分)

ここが最も実装的なフェーズです。Pythonを使い、以下の要素を組み合わせます:

1. Claudeのライブラリ導入:Anthropicが提供するPythonコード集を自分のプロジェクトに組み込みます。これにより「Claudeに質問を送る」「Claudeからの返答を受け取る」といった処理が簡単に書けます。

2. エージェント定義:各エージェントが持つべき役割や指示を関数という再利用可能な処理単位として書きます。

3. 実行フロー:エージェント1→エージェント2→エージェント3という順番を制御する処理です。

4. エラーハンドリング:もし途中で失敗したらどうするか(リトライするか、ログを記録するか)を定めます。

実装の具体的な例は、GitHub上の公開プロジェクトから参考にできます。特に「Building an autonomous multi-agent SEO system」というプロジェクトでは、実用的なSEO最適化システムのコード全体が公開されており、これをベースに改造することで、自分たちのニーズに合わせたシステムを作れます。

ステップ5:テスト実行と本番運用へ(目安:30分)

コードを書き終わったら、実際に動かしてみます。初回は小規模なテストから始め、エージェントが期待どおりに動くか確認します。

この段階で頻繁に起こる失敗には以下のようなものがあります:

  • Claudeへのリクエストがうまく送信されていない(多くの場合、APIキーの設定ミス)
  • エージェント間でデータの形式がずれている(一方がJSON形式で送ったのに、もう一方がテキストで受け取ろうとしている)
  • スケジューラーの時刻設定が違う(「毎日9時に実行」と書いたつもりが、実は夜中に走っていた)

こうした問題は、GitHub Actionsの「ログ」を確認することで原因が分かります。ログとは、実行時の詳細な記録です。

テストで問題がなければ、本番環境(実際に使う環境)に移します。初期段階では「1日1回動かす」程度の保守的な設定から始め、様子を見て「毎時間実行」などに進めることをお勧めします。

つまずきやすいところ

1. APIキーの管理

ClaudeのAPIキーは、銀行口座の暗証番号のようなものです。これが漏れると、他の誰かがあなたのアカウント経由でClaudeを使い、料金が発生します。

GitHub Actionsでコードを実行する際には、APIキーを「環境変数」という隠れた場所に保管し、コードからは「この隠れた場所からAPIキーを取ってきて」と指示する方法を使います。GitHub上に直接「sk-…」のような文字列を書き込むのは、絶対に避けましょう。

2. エージェント間での仕様のずれ

3つ以上のエージェントが協力する場合、「エージェントAは結果をJSON形式で返す」と決めたのに、実装時に「エージェントBはプレーンテキストで結果を受け取る」という食い違いが生じることがあります。

これを防ぐには、プロジェクト全体で「入出力のルール」をドキュメント化(文書にまとめる)しておくことが効果的です。

3. 予算管理

Claudeは従量制なので、エージェントが何回も何回も実行されるシステムでは、思わぬ高額な料金が発生する可能性があります。特に、エージェントが「失敗→リトライ→失敗→リトライ…」というループに陥ると危険です。

GitHub Actionsのログを定期的に確認し、実行回数や処理時間が想定の範囲内かチェックすることをお勧めします。Anthropicのダッシュボードで現在の使用額と予測額を確認できます。

4. 環境依存の問題

GitHub Actionsのサーバーと自分のローカルPC(手元のコンピュータ)では、インストールされているライブラリが異なることがあります。「ローカルではうまく動いたのに、GitHub Actionsでは失敗する」という現象が起きやすいです。

これを防ぐには、プロジェクトにrequirements.txtというファイルを作り、「このバージョンのこのライブラリが必要」と明記しておくことが大切です。

慣れてきたら試したいこと

1. エージェント数の段階的な増加

最初は2~3個のエージェントで小さく始めたら、成功を確認してから4個、5個…と増やしていく方法があります。各段階で新しいエージェントを追加する際の課題(通信ルール、役割の定義、コスト管理)に対処する経験が積めます。

2. エージェント間の「交渉」メカニズム

エージェントが単に情報をやり取りするだけでなく、「Aさんはこう言っているけど、Bさんはこう言っている。どう調整する?」という合意形成プロセスを組み込む方法があります。Anthropicの報告では、こうした「交渉エージェント」が商取引の現場で活用されています。

3. 外部データとの統合

現在のシステムが単一のタスク(記事作成など)に特化しているなら、外部のデータベースやAPI(他社のWebサービスと連携する接続口)と組み合わせることで、より実用的なシステムに進化させられます。

たとえば、Google Search ConsoleやSEOツールのAPIと連携させ、リアルタイムの検索データをエージェントに提供すれば、より精度の高い記事作成が実現します。

4. コスト最適化の工夫

複数のエージェントが並列で動くと便利ですが、料金も増えます。以下のような工夫が可能です:

  • 「まず1つのエージェントで簡易版を作り、その結果で重要度を判定してから、本格版のエージェントを実行する」という段階的フィルタリング
  • エージェントが何度も同じ質問をしないよう、結果をキャッシュ(一時保存)する機能
  • 並列実行ではなく、順序を工夫して必要な時だけ並列にする方法

実際のプロジェクト例では、こうした工夫により、ナイーブな実装比で3分の1のコストに削減しながら、同等以上の成果を上げているケースが報告されています。

5. 監視・アラート機能の強化

システムが自動で動くようになると、「今、何が起きているのか」を追跡することが難しくなります。Slack(チャットツール)やメールに通知を送り、「エージェント3の実行が失敗した」「今月の予算の80%を使った」といった情報をリアルタイムで受け取る仕組みを導入すると、トラブル対応が迅速になります。


このシステムは、一度構築してしまえば、非常に汎用性が高く、様々なビジネスシーンに応用できます。最初は小さな実験から始めて、成功パターンを増やしていく。そうすることで、自分のチームの仕事の進め方が大きく変わる可能性があります。


あわせて読みたい

参考ソース