AI最新ニュース 2026.05.11

AMD ROCmが14日間で75倍高速化——DeepSeek公開後のAIハードウェア競争の最新動向

タグ:AMD / ROCm / AIハードウェア / DeepSeek / 生成AI

TL;DR

  • AMD ROCm(AMDのAI向けソフトウェア基盤)は、DeepSeek v4公開後のわずか14日間で推論スループットを最大75倍改善したと報告されている。
  • この高速化はソフトウェア最適化によるもので、ハードウェアの買い替えなしに既存のAMD GPU環境で恩恵を受けられる可能性がある。
  • AIインフラ市場でNVIDIA一強とされてきた構図に変化の兆しが出ており、コスト重視の企業にとって選択肢が広がりつつある。

変更内容の詳細

DeepSeek公開が引き金になったROCmの急進化

2025年初頭にDeepSeek v4(DeepSeek-R1シリーズ)が公開されると、オープンソースの大規模言語モデル(生成AIの中核となる大型モデル)を自前環境で動かしたいという需要が世界的に急増した。AMD製GPUを使うための統合ソフトウェア環境であるROCmは、当初このモデル群を効率よく動かすには不十分な最適化にとどまっていたと報告されている。

しかし公開からわずか14日間で、ROCmの推論スループットは最大75倍という大幅な改善を記録したとDev.toの記事(AMD ROCm Performance Jumps 75x in 14 Days Post-DeepSeek v4)は伝えている。これはカーネル(GPU上で動く最も低レベルな計算プログラム)の書き直しやメモリ転送の効率化といったソフトウェア側の集中的な改善によるものとされている。

浮動小数点(計算精度)の扱いも見直しの動き

並行して、深層学習における数値の扱い方そのものを再考する議論も活発になっている。Dev.toの別記事「Rethinking floating point for deep learning」では、AIモデルの学習・推論で使われる浮動小数点形式(数値をどの精度で表現するか)の選択が、速度と精度のトレードオフに直結すると解説されている。

従来はFP32(32ビット精度)が標準だったが、FP16やBF16(より低いビット数で計算を高速化する形式)の活用が広がり、さらにFP8などより積極的な低精度化も研究・実用化が進んでいる。この流れはROCmのような推論環境の最適化とも密接に関係しており、同じGPUハードウェアでもソフトウェアや数値精度の選び方次第で性能が大きく変わる時代になっている。

Qwen・Claudeのベンチマークへの波及

ROCmの高速化によって、QwenやAnthropicのClaudeといった主要モデルのベンチマーク(性能測定)環境にも変化が生じている。AMD GPU上での実行速度が改善されることで、これまでNVIDIA GPU前提で語られていた「どのモデルがどれだけ速いか」という比較の前提条件が変わりつつある。特にオープンソースモデルを自社サーバーで動かしている企業にとっては、AMD GPUの採用コストと性能のバランスを改めて評価する機会になっている。


既存ユーザー・既存システムへの影響

AMD GPU利用者

既存のAMD GPU(Instinct シリーズなど)を使ってAIワークロードを動かしている環境では、ROCmのバージョンアップによって追加投資なしに大幅な速度改善が得られる可能性がある。特にDeepSeekやLlama系のオープンソースモデルを動かしているケースでは恩恵が大きいと考えられる。

NVIDIA GPU利用者・クラウド利用者

NVIDIAのCUDA環境やクラウドのGPUインスタンスを利用している場合、今回のROCm改善は直接は影響しない。ただし、AMDの競争力向上によってGPUクラウドの料金競争や選択肢の多様化が進む可能性がある。

浮動小数点精度の変更を検討している開発者

FP16・BF16・FP8といった低精度計算に切り替えることで推論速度が上がる一方、モデルによっては出力精度に影響が出る場合もある。本番環境に導入する前には、対象モデルでの動作確認が必要になる。


必要な対応・移行手順

ROCmのバージョン確認とアップデート

AMD GPU環境でAIモデルを動かしている場合、まず現在使用しているROCmのバージョンを確認し、最新版へのアップデートを検討することが推奨される。公式のROCmリリースノートでサポート対象のGPUと変更内容を確認できる。

# 現在のROCmバージョンを確認するコマンド例
rocm-smi --version

なお、具体的なバージョン番号はソースに記載がないため、公式サイトで最新情報を参照のこと。

浮動小数点形式の見直し

既存の推論パイプライン(モデルを動かす一連の処理)でFP32を使っている場合、BF16やFP16への切り替えを試すことで速度改善が見込める。ただし、切り替え後は出力の品質を必ず確認することが望ましい。

ベンチマーク環境の再評価

AMD GPU環境でQwenやDeepSeekなどのモデルを評価したことがある場合、ROCm改善後に改めてベンチマークを取り直すと、以前の結果と大きく異なる数値が出る可能性がある。モデル選定やインフラ投資の判断に使う数値は最新の環境で取得することが望ましい。


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参考ソース